過去が足を引っ張るからであろうか。
色々手遅れな気もするが。
前に進むだけの力はなんだろうか。
身軽でなきゃ空は飛べない。
先代の失敗により、
子を成すこともできず、
財を成すこともできず、
没落の一途を辿る。
懸命に生きたと言うし、まぁそうであろうが、継ぐことを考えなかったのだろう。名前負け。成功なくして次はない。
そうはなりたくないし、なりたくなかったのだが、
順序を間違え、相手を間違え、
俺は何をもってかこんなことになったんだろうか。
財を成すにはどこかで博打を打たねばならぬが、中途半端な博打を打ったのは間違いない。そして負けている。
他の失敗を見て安心している自分がいる。なんと情けないことか。自覚はするが、安心を得るにはそれしかない。淋しい人よ。
思えば失敗している人だけが周りにいて、ただ安心して過ごしているのだ。成功者の側では心が辛すぎて生きてはいけぬ。輝かしいものを見るには昏すぎる。
何事も自分でなくてはならぬ理由はないことはよくわかる。であれば、自分がこの人でなくてはならぬと選ばねばならぬが、それで上手くいかなかったからこその今である。
唯一性なんてものは土台存在しない。幻想。
この人が良いと思う一方で、この人でいいやと思わせるくらいが良いか。本当はこの人が良いと思ってほしいが、互いに想うことは困難であるし、年齢的に恋愛が中途採用であるところの今、それはもう無理だろう。そこにはストーリーがない。
この人が良いという人間は何か。丈夫な身体を持ち、地位と身分があり、財を持ち、気品ある見目形に聡明誠実であるところだろうか。数々のストーリーと能力が、知識経験に裏打ちされた人物。そういう意味ではもう手遅れである。何物も手に入らない。
身軽で空も飛べる人間になりたい。
イカロスのように翼が焼かれ地に堕ちて派手に果てるのは、地べたを這いつくばって人知れぬ滅されるより幾分かマシであろう。
翼を手に入れられるか。白い翼でなくて良い。黒くてもいいんだ。